実行委員長メッセージ
第20回 Japan Endovascular Symposium 開催にあたって

本年8月22日(金)、23日(土)、24日(日)に完全オンライン形式で血管病の最先端を討議するJESを開催します。私が米国から帰国した2006年に始めたJESは今年で第20回目の節目の年になります。
私が12年間の米国での活動を終え帰国した2006年にJESを立ち上げましたが、その時の狙いと理念は2つありました。1つは特に血管内治療で立ち遅れていた日本の現状を憂いブースト効果、テコ入れをしたいと願ったことです。 それと米国で自分が億を超える給料をもらっていたにもかかわらず、日本では800万円の年収を提示され、改めて日本の勤務医の劣悪な労働条件を憂いた事からせめて参加費は日本一安い学会にしたいとの願いです。前者に関しては「論より証拠」でデータや統計よりも臨場感のある、そして嘘偽りのないありのままのライブサージェリーで当時未承認だった大動脈瘤ステントグラフトを始め、最新の血管内治療デバイスとその威力を供覧する構成としました。実際、最初の10年間は2日間で20例を超えるライブをお見せしました。しかもそのうち半数近くは本邦初公開という意欲的かつ今から振り返ると勇気ある症例ばかりでした。しかしその後ライブサージェリーに対する逆風が吹き荒れJESでもライブがしづらい環境となりました。この時にJESはその歴史的使命を終えたので店じまいするか、あるいは形を変えて存続することを検討しました。最初に思いついたのはビデオライブを中心とした学会にすることでしたが、成功した症例の編集されたビデオを供覧することであれば通常の学会でも行われていることでしたので差別化やJES固有の価値を見出すことができませんでした。ビデオライブでライブサージェリーに優る点は唯一合併症を供覧できることに着想し、おもわしくない結果となった反省症例、失敗症例をビデオライブ形式でファカルティーを中心とした皆様に提示していただくことで、JES特有の価値を見出そうとしました。時代とともに変遷したJESの有りようとプログラムですが、20年前にJESを立ち上げた際の2大理念は今日も生き続けています。
そして、コロナ騒動の2020年にJESは変貌を遂げました。この年は緊急事態宣言などもあり社会も混乱しておりましたので緊急避難的にオンライン形式としましたが、この開催方式が多忙の先生方にとってベストである事が判明しました。それは視聴者数の増加と、参加者アンケート回答からも明らかでした。現地開催の良さはもちろんありますが、学会や研究会が乱立している状況だからこそ、基盤となる学会以外で多忙な医師の拘束時間を増やす事を極力避けたいと私は考えております。JESは世界中のどこからでも参加できるので、無駄に移動時間を確保する必要はありません。さらにオンライン化に合わせて土日開催を基本としましたので家族サービスや当直の合間でもログインできることが功を奏しました。必要なセッション、勉強したいセッションにダイレクトにアクセスできる利点を生かして時間の有効活用をして頂ければと思っております。
さて、今年の見どころは、是非以下の実行委員長挨拶動画も見て頂きたいと思いますが、なんと言っても、久々に復活したLIVE SURGERYです。GOREのTBE LIVEは是非見逃さない様にして頂きたいと思います。慈恵では数例施行しており、本邦初ではありませんが、多くの先生方は未だ見たこともないものでしょう。TBEは今後の弓部大動脈瘤の治療を大きく変えるデバイスになると思いますのでLIVEを通じて多くの先生方に情報を提供する事はJESの社会貢献にもなると思います。またライフラインのAFXによる平凡AAA LIVEもあります。本症例はnarrow terminal aortaに加えてロングネック、複数腰動脈開存とAFXの利点が理解できる症例ですので、平日の金曜日とはなりますが、ぜひ仕事の手を止めて、JESにログインしていただきたいです。
翌日の土曜日朝からはこれまで通り前述しましたJESの真骨頂である不成功・反省症例を皆さんに提示してもらい、「賢者は歴史に学ぶ」、他人の失敗から学び、同様の事を繰り返さないようにするという考えを軸に組んでおります。人様に隠したいような反省症例を勇気と使命感を持って発表してくれる演者には感謝します。その他にいくつものHot Topicsのテーマ、シンポジウムを予定しております。土曜日の午前中からお昼にかけては、昨年も好評だった進化が続いている大動脈解離について深掘りします。そして、JES20周年特別企画をはさんで、今年3月にフォーカスアップデート版末梢動脈疾患ガイドラインで、大きく変貌を遂げたALIのセッションです。血栓吸引デバイスが承認されましたので使用のコツが学べるセッションを設けました。その後は静脈セッションです。近々、静脈ステントが承認される見込みですのでタイムリーを旨とするJESらしく静脈セッションにも力を入れています。土曜日の最後のセッションは腹部大動脈瘤ステントグラフトについてです。多くの有益な話題を用意しております。
最終日の日曜日は、毎年恒例の飯田修先生の末梢血管病の最新情報とランドスケープが把握できる1時間の講演で始まります。毎年申し上げている事ですが、これを視聴すれば当面の間、PADの勉強をする必要はない、というJESの目玉商品です。続いてCLTIセッションを用意しましたので、PADを学びたい方は是非、日曜日の午前中は早起きでお願いします。そして、PADセッションの最後は血行再建不能虚血肢を前に打ち拉がれる我々にとって福音となるかもしれないアフェレーシスの最新データを紹介し、「大切断の前にレオカーナ!(Attempt Rheocarna prior to major amputation)」の真偽を問います。そして、JESの最後の目玉は何といっても弓部大動脈瘤のシンポジウムです。慈恵医大・血管外科で開発しコツコツと行ってきたRIBS法が全国の基幹施設へと普及しはじめパラダイムシフトの予感がしています。初日のLIVEでTBEが世に出てきましたが、それでもすべてが可能な訳ではないのでRIBS法の存在価値は揺らがないと思います。「ご当地RIBS」セッションでは全国のRIBSを施行している演者で、深掘りして最新の情報を提供します。
今年もすべてのセッションは視聴者と双方向のオンライン設定で誰でも議論に参加できますので遠慮せずに異論・反論をぶつけてほしいです。今年は、例年を大きく上回り三日間で延べ30時間を例年通り全セッションの司会をトイレ休憩もとらずに私が務めます。これにより一定のバイアスがかかってしまうことは否めませんが、お行儀の良い学会と違い、本音トークで真相に迫り、スパイスとウィットをきかせて退屈させないエンタメ要素のある30時間とします。
また、例年通りみなさんの利便を考慮し土曜日、日曜日を中心に開催しますので、仕事、当直、家事の合間に興味のあるセッションを存分に視聴していただければ幸いです。
参加費は今年も500円で、3日間、30時間が堪能できるワンコイン学会で、コスパ世界一は間違いないでしょう。皆さんが多く参加してくれることで、スポンサーから協賛を得ることができ、そしてそれをこのワンコインという形で還元できる訳ですので「help me to help you」の精神で多くの皆さんにJESに参加していただきたいと願っています。
コスパが高く利便性の高いオンライン形式で、皆さんのWLBを損なうことなく価値ある最新情報を日本語でエンタメマインドも忘れることなく発信するJESの社会貢献と真骨頂を今年もぜひご堪能ください。
第20回 ジャパン エンドバスキュラー シンポジウム (JES 2025)
実行委員長 大木 隆生
東京慈恵会医科大学 外科学講座
血管外科教授
https://twitter.com/Ohki_TakaoMD


