実行委員長ご挨拶

第18回 Japan Endovascular Symposium 開催ご報告

第18回Japan Endovascular Symposium(2023年8月26日・27日 オンライン開催)を盛会裏に終えることができました

オンライン開催となって、4回目のJESとなりました。今年の参加登録者は昨年より増えて1061名、2日間の延べ視聴者数は2000名を超え、また常時視聴者が500名を超え、多くのセッションで500〜600人の試聴があり、昨年をさらに上回る大盛況でした。

参加者が増え、医師の参加が600名以上もあった事はこの上ない喜びです。JESに参加したくても、なかなか病院を離れられず参加できなかった遠方や若手医師の潜在的ニーズに応えることができたと自負しております。アンケートではこれを裏付けるように初めての参加者が約15%を占めており、オンライン・ライブストリーミング開催の長所が発揮されたと思っております。また、JESは主に外科医、放射線科医が中心の会でしたが、一般的にオンライン開催は質疑応答が盛り上がらない点が短所とされていますが、今年のJESでもそのような事は全くなく、一般視聴者から口頭あるいはチャットを活用したご質問が多数あり、全てにお答えしきれないほど活発でした。また、不成功・反省症例検討会、大成功・してやったり症例検討会では、視聴者によるリアルタイム投票でベスト症例賞を決定するなど、対面と変わらない参加者との双方向性と一体感をもって開催できたことはJESの真骨頂だと思っております。

プログラム全体に関しては、多数の不成功・反省症例に加え、今回は大成功・してやったり症例の応募を頂きました。企業共催も例年以上にご協力のお申し出を頂きました。合計28セッション25時間の連続座長で議論が白熱したために、予定時間よりも1時間以上も超えてしまう中継となってしまいました。それに加えて、セッション間の休憩時間が2日間で10分、26回(4時間20分)ありましたが、そのすべての休憩時間を完全に返上した上での25時間でしたが、そこには視聴し続けるためにPCをトイレに持ち込んだ1分x 4回=4分も含まれています。。。私はそのすべてのセッションの座長を一度も途切れることなく務めましたので(おそらくこれは参加者1,000名以上の学会ではギネスレコード)、座長の不手際での延長ではありません。各演者の皆様が魅力的で充実した内容、参加者からのグッドクエスチョン、一部は突っ込み所満載の内容でご発表頂いたので、通常学会のようにそのまま、消化不良で議論を終わらせる事をせず、こんな時こそ大木個人商店的JESの強みを活かして確信犯的にシームレス・連続25時間白熱討論をしました。にもかかわらず401名から回答が得られたアンケートでは討論時間に関して「丁度良い」が90%、「短すぎる」が4%であった事は奇跡的であり、また、JES自体については「面白かった」が77%、「勉強になった」が22%で合わせて99%の皆さんが支持してくださった事は快挙と自負しています。また、自分に関しては、すべての時間が有意義で興味深かったですので自分は声のかすれも疲労感もありませんでした。ただ、医師の働き方改革後にこの25時間が時間外労働と計上されると少し厄介です。

昨年に引き続き原正幸・JES事務局長、第123回日本外科学会事務局長をつとめた宿澤孝太、ノベルティ・宴会担当大森槙子、そして慈恵医大血管外科全員で策定したプログラムでしたが、全セッションで活発なディスカッションが展開された事を嬉しく思っております。ご発表、共同座長で御登壇頂いたファカルティー皆様には深く感謝申し上げます。JESの運営に関しまして、中継に遅延やトラブルは全くありませんでしたがこれは自分が帰国した2006年の第1回JES以来18年間ずっとパートナーであったエヌ・プラクティスと教映社が蓄積した経験とコミットメントの賜物です。

今年も多くのプログラムが心に残りましたが、やはりその一つは例年通りではありますが不成功・反省症例検討会で発表の演題でした。不幸な転帰をたどった厳しい経験を、勇気をもって発表頂きありがとうございました。普段はこうした事例でディスカッションする機会がない他施設の先生方との白熱した本音議論を通じて、明日からの臨床にすぐにでも役に立つ数々の教訓があり、JESの参加医師が自施設にこの教訓をもちかえって「反面教師」とするだけでも、JESは数千、数万人の患者の命を間接的に救っていると自負しています。ご発表頂きました先生方が、自身の苦々しい経験を潔く省みて、皆に共有する姿勢に敬意と謝意を表します。その他のプログラムではやはり、恒例となっている2日目の朝の「飯田修先生の血管内治療最新の知見」です。大袈裟に言えば、これを聞いたら、向こう1年の他の学会で一切聴講しなくても恥ずかしい想いをしないで済む、と思わせるほど今年もパーフェクトなレクチャ—でした。そして、「シンポジウム5:弓部大動脈瘤治療の最前線-ご当地RIBS-」では、私が自ら開発し、これまで10年近く、コツコツと実績を重ねた手術不能弓部大動脈瘤に対するRIBS手術が全国の大学病院に拡がり、各病院で極めて良好な成績を収めていることが明らかとなり感慨深かったです。また、本セッション後に早速、新たに「当病院でもRIBSを開始したいのでご指導を」との依頼があり、望外の喜びです。PADセッション「循環器内科医のホンネ:外科医に言いたかったこと、言えなかったこと」では5名の内科系医師と乱入者1人の計6名の連合軍VS大木隆生の様相を呈しましたが熱いディベートとパンチの応酬の後はノーサイド精神よろしく、サイバー空間でハグして終わりました。共催セミナー17では高度慢性下肢虚血(CLTI)に対するアフェレーシスのセッションでは好成績を残したTURNIP研究のデータを題材とし、「大切断の前にレオカーナ、コンセプトを問う」と名打って議論しましたが限界の見えてきた外科手術、EVTを補完する新たな治療選択肢が登場した印象を持ちました。その他にも、挙げ始めたらきりがありませんので、このくらいにしますが、今年のJESを終えて、18年間継続してきて良かったと心から思えました。何よりも、全力で発表あるいは質疑に参加して頂いたJESファミリーと今年向かえた新しい仲間のみなさまに大変感謝しております。改めて御礼申し上げます。

第1回目から実施しているJES参加者アンケートは401名と多くの方からご回答頂きありがとうございました。先述の通り、ほぼ100%の皆さんに「今年のJESは有意義、あるいは面白かった」「オンライン開催はよかった」とご回答いただき安堵いたしております。「JESに求めるものは?」という質問には、1)新しい知見、2)他の学会にはない徹底討論、3)大木のトークがいずれも80%強と強く支持されておりましたので、今後もこうした声に耳を傾けつつ本音討論を優先し通常学会との差別化をはかり続けたいと思っております。その他のアンケート結果をまとめたデータを添付しましたのでご覧ください。参加者アンケート結果

さて、来年もJESはオンラインでの開催を予定しております。そして、毎年圧倒的多数の皆様のご要望であるライブサージェリーを復活させる予定ですが、詳細に関してはJES2024に対する皆様のアンケートの内容を踏まえつつ、さらにパワーアップしたプログラムを提供できる様に、さっそく今日から旬な話題を血管外科スタッフとともに各学会でアンテナを高くして模索して参ります。向こう1年間の様々な学会場で当科スタッフを見かけましたら、一人一人がミシュラン審査員の気持ちで聴講していることをお知りおきください。

なお、オンデマンド配信については、今回も多くの方からご要望を頂きましたので、許諾が得られたプログラムの講演について、準備をすすめております。公開ができるタイミングになりましたら、改めてご案内いたします。

アンケート回答いただいた皆様には別便で記念品を送らせて頂くべく準備を進めております。選択肢を2つご用意しましたが、実用性のあるJESオリジナルJetstreamボールペンより、レトロ感溢れ実用性ゼロの「フォーエバーJES」キィーホルダーのご希望が60%であった点に皆様のJES愛が感じられました。
本来ならば、直接会場でお渡しすべきところを、郵送となりますことをお許しください。

皆さまのご参加、ご提言、コメントがあってのJESです。
改めて感謝申し上げます。

第18回 ジャパン エンドバスキュラー シンポジウム (JES 2023)
実行委員長 大木 隆生
東京慈恵会医科大学 外科学講座
血管外科教授
https://twitter.com/Ohki_TakaoMD

第18回 Japan Endovascular Symposium 開催にあたって


画像をクリックすると動画が流れます。
ボリュームにご注意ください。

2023年8月26日(土)・27日(日)JES2023(第18回ジャパンエンドバスキュラーシンポジウム)は、今回も完全オンライン形式で開催いたします。

2006年の第1回から第15回までの15年間、JESは8月の最後の週に東京慈恵会医科大学で、全国から毎年約1000名の参加者が集い、熱気あふれる会場で開催することが当たり前の光景でした。そして、2020年の新型コロナウイルスパンデミック以降、いち早くオンライン開催へと変更しました。当初は新型コロナウイルスが理由で止むを得ず現地とライブストリーミングによるオンラインを合わせたハイブリッド開催としましたが、経費がほぼ倍になるこの形式はサステイナブルではありませんでした。そこで昨年からは、JESの特性と他の学会との差別化を念頭にJESは敢えて完全オンライン開催と致しました。その理由として、ライブストリーミング形式のオンライン開催ではJESに参加したくても、なかなか病院を離れられず参加できなかった遠方や若手医師の潜在的ニーズに応えることができるからです。2点目は、ご登壇の先生方の貴重な時間を有効に使うことに貢献ができるからです。この点はオンラインの長所であるといえます。特にオンライン開催で新たにご登壇頂ける先生が増え、より多くの全国の先生方の集いの場としての役割を担えると思います。一般的にオンライン開催は質疑応答が盛り上がらない点が短所とされていますが、過去3回のJESでそれは杞憂で、一般視聴者から口頭あるいはチャットを活用したご質問が多数あり、全てにお答えしきれないほど活発ですし、また、不成功・反省症例検討会では、視聴者によるリアルタイム投票で優秀演題賞を決定するなど対面と変わらない、あるいはそれ以上の参加者との双方向性と一体感をもって開催できています。これはまさにJESの真骨頂だと思います。

今年も、ありがたいことに企業共催セミナーのご協力を多数いただきました。JESの一丁目一番地である「不成功・反省症例」、そして新企画「大成功・してやったり症例」には、公募やファカルティから多くの演題登録を頂きました。これらの熱意に応えて、2日間、徹底的に熱いディスカッションをしたいと思っております。例年通り、全セッションの司会は私が務め、本質的かつ徹底議論を提供します。オンライン開催ですので、全国の勤務、当直中の先生方には、24時間テレビに負けないくらいの豊富なコンテンツを準備しておりますし、今年もワンコイン学会(参加費五百円)ですので、ぜひご参加、ご視聴を頂ければと思っております。

以上のように今年も充実したプログラムをお届けいたしますが、会期は例年どおり、2日間に収めました。

夏の風物詩JESに今年も多数のご参加をお待ちしております。

第18回 ジャパン エンドバスキュラー シンポジウム (JES 2023)
実行委員長 大木 隆生
東京慈恵会医科大学 外科学講座
血管外科教授
https://twitter.com/Ohki_TakaoMD