この度は、ご多忙のところJES2007にご参加くださりありがとうございました。昨年の第1回JESには420名ものご参加をいただきましたが、おかげさまで大きな事故もなく無事終了いたしました。
近年の心臓血管領域におけるインターベンション技術の発展には目覚ましいものがあります。多くの血管病治療において、パラダイムは急速に変遷し数年前の常識が通用しなくなっています。インターベンション治療は、頚動脈、胸部・腹部大動脈、内臓動脈、腎動脈、下腿動脈など、従来の血管外科で扱っていたすべての部位・疾患に適応されております。新しいテクニックとデバイスが次々と開発され、まさに日進月歩の様相を呈しています。
これまでの医学教育は、大学医学部在籍中と研修・レジデントなどのトレーニング期間中に行われていました。虫垂炎手術、大動脈瘤手術、下肢バイパス術などのようにある程度手技や技術が成熟、また安定した分野においては、従来の医師教育システムがうまく機能していましたが、現在の血管病治療のように急速に進歩する分野においてはもっとフットワークが良く小回りのきくトレーニングシステムが望まれます。
さらに、血管インターベンションでは、カテーテルを主体とした手術道具を用いて、遠隔操作を白黒の2次元の画像情報をもとに行うという、従来の外科手術とは全く異なった知識やテクニックが要求されます。また、新しい診断、治療器具は毎月のように登場します。現在こうした新しい血管病治療の know how を効率よく学ぶ手段は限られております。今年から企業製の腹部大動脈瘤ステントが保険適応となりましたが、これを使用するにあたって各メーカーが1〜2日のトレーニングコースを開催していますが、これだけでは十分とは言えないでしょう。頸動脈ステントや胸部大動脈瘤ステントなど、近い将来薬事承認を取得する見込みのあるデバイスも多数ありますが、それぞれにこうしたトレーニングコースの開催が見込まれています。さらに、トレーニングコースすら行われず、「見よう見まね」で使わざるを得ないデバイスも多数あります。
イノベーションの黎明期にある血管病治療においては、インターベンションや新しい器具のトレーニングの需要はますます高まるものと予想されます。また、これまでは下肢ASOと腎動脈のインターベンションの知識と技術の伝播はおもに循環器内科系の学会、頚動脈ステント術は脳外科、胸部、腹部大動脈瘤に対するステントグラフト術は心臓血管外科系の学会でなされ、血管病インターベンションのフラグメンテーションがおこっていました。
JESは、こうした現状を踏まえ、末梢血管病に対するインターベンションを包括し、さらに2日間の期間中はライブインターベンションを中心に、“Why”もさることながら “How”を皆さんとともに考えることを念頭に設立されました。JESは日本で唯一「Neck to Toe Intervention」を供覧する研究会です。昨年のJESでは16例のライブ症例と17の講演を行いましたが、参加者を対象に行ったアンケート調査で、多くの方から「講演の数が多すぎる」「ライブ症例をもっと増やしてほしい」との意見が寄せられました。こうした声を反映し、今年はライブインターベンションを20に増やし、講演数を11に減らしました。無論、新しい器具の安全な使用法やテクニックを習得するには2日間では不十分でしょうが、これから血管病の新しい治療を始めようという先生方にとって有意義な第一歩となることを願っております。
今月、日本心臓血管外科学会、日本胸部外科学会、日本血管外科学会により「胸部・心臓血管外科ライブ手術ガイドライン」が策定されました。JESでは、いわゆる「胸部・心臓血管外科手術」ではなく血管インターベンションを行いますが、JES運営にあたってはこのガイドラインを遵守するために最大限の努力をいたします。その一環として、症例検討タイムを設け、昨年の症例の経過報告集も作成しました。また症例選択にあたっては、特殊症例ではなく一般的な症例を選び、標準的手技を供覧します。
ご記憶の方もおいででしょうが、昨年の第1回JESは、私の慈恵医大赴任2ヶ月目での開催となったために、医局員、看護師、スタッフとも血管インターベンションとライブサージェリーに不慣れでした。今年はパワーアップした血管外科スタッフと血管外科専用手術室が万全の体制で臨みますので、より高度でスムーズな手技、運営が期待できます。
JES研究会は、よりよい血管病治療を目指す外科医を応援しています。最後に、多大なご協力をいただいたスポンサーの皆様に厚く感謝いたします。
Japan Endovascular Symposium研究会
実行委員長 大木 隆生
[ ライブサージェリーファカルティー ]
会期 | 2007年 8月27日(月)・ 28日(火) |
主催 | Japan Endovascular Symposium研究会 |
実行委員長 |
大木 隆生 Takao Ohki,MD |
世話人 | 古森 公浩、横井 良明、横井 宏佳、大木 隆生 |