この度は、第3回JESにご参加くださいましてありがとうございました。第1回JESには420名、第2回には550名もの方にご参加いただきました。いずれにおいても大きな合併症もなく無事終了いたしました。
血管病治療におけるパラダイムシフトはさらに加速し、数年前の常識が通用しなくなっています。そして、血管病に対するインターベンション治療は、頚動脈、胸部・腹部大動脈、内臓動脈、腎動脈、下腿動脈など、従来の血管外科で扱っていたすべての部位・疾患に適応されております。新しいテクニックとデバイスが次々と開発され、まさに日進月歩の様相を呈しています。これまでの医学教育は、大学医学部在籍中と研修・レジデントなどのトレーニング期間中に行われていました。虫垂炎手術、内膜剥離術、大動脈瘤人工血管置換術などのように、ある程度手技や技術が成熟・安定した分野においては、従来の医師教育システムがうまく機能していましたが、現在の血管病治療のように急速に進歩する分野においては、もっとフットワークが良く小回りのきく医師トレーニングシステムが望まれます。また、新しい診断、治療器具は毎月のように登場します。例えばOrbitコイル塞栓は7月に上市したばかりですし、近日中に、より進化したZenith Flexが登場します。現在こうした新しい血管病治療のknow howを効率よく学ぶ手段は限られております。昨年から腹部大動脈瘤ステントが保険適応となり、これを使用するにあたってメーカーが2日間のトレーニングコースを開催していますが、これだけでは十分とは言えないでしょう。さらに、これまでは下肢ASOと腎動脈のインターベンションの知識と技術の伝播は主に循環器内科系の学会、頚動脈ステント術は脳外科、胸部、腹部大動脈瘤に対するステントグラフト術は心臓血管外科系の学会でなされ、血管病インターベンションのフラグメンテーションが起こっていました。
JESは、こうした現状を踏まえ、末梢血管病に対するインターベンションを包括し、さらに2日間の期間中はライブインターベンションを中心に、“Why”もさることながら“How”を皆さんとともに考えることを念頭に設立されました。JESは日本で唯一「Neck to Toe Intervention」をライブで供覧する研究会です。第1回JESでは16例のライブ症例と17の講演を行いましたが、参加者を対象に行ったアンケート調査で、「講演の数が多すぎる」「ライブ症例をもっと増やしてほしい」との意見が寄せられましたので、第2回、そして今回もこうした声を反映し、ライブ症例を20例に増やし、講演数を減らしました。無論、新しい器具の安全な使用法やテクニックを習得するには2日間では不十分でしょうが、これから血管病の新しい治療を始めようという先生方にとって有意義な第一歩となることを願っております。
また今年から頸動脈ステントと塞栓フィルター、胸部大動脈瘤ステントグラフトが保険適応となりました。いずれも待ちに待ったgreen signですので、頸動脈は2症例とTAGは4症例、また関連講演も含めこれら2疾患により多くの時間を割いております。さらに、慈恵医大ではSFAインターベンションの切り札と考えられている薬剤溶出ステントの無作為割り付け試験も行っておりますので、割り付け方法を含めその実際を供覧します。
今年も「胸部・心臓血管外科ライブ手術ガイドライン」を遵守しながら、本会を運営したいと思います。その一環として、症例検討タイムを設け、昨年の症例の経過報告集も作成しました。また症例選択にあたっては、特殊症例ではなく一般的な症例を選び、標準的手技を供覧します。
ご記憶の方も多いでしょうが、一昨年の第1回JESは、私の慈恵医大赴任2ヶ月目での開催となったために、スタッフは血管インターベンションとライブサージェリーに不慣れでした。今では年間の大動脈瘤治療件数350超、下肢閉塞性動脈硬化症200件超を含む800例超の血管外科手術とインターベンションを施行していますので、血管外科スタッフ、看護師、技師はさらにパワーアップしております。第3回JESではより高度でスムーズな手技、ライブ運営が期待できます。
愚者は経験に学び賢者は歴史に学びます。新しい医療分野である血管インターベンションの領域では、手術治療とのすみわけが定まっていないもの、未完成の医療器具や手技がまだたくさんあります。我々の成功や失敗からより多くのものを学んでいただき、明日からの治療に役立てていただければ幸いです。今年も、一人でも多くの方に「JESに来て良かった、勉強になった」と言ってもらえることを、慈恵医大血管外科スタッフ一同願っております。
Japan Endovascular Symposium研究会
実行委員長 大木 隆生
[ ライブサージェリーファカルティー ]
会期 |
2008年 8月25日(月), 26日(火) |
主催 | Japan Endovascular Symposium研究会 |
実行委員長 |
大木 隆生
Takao Ohki,MD |
世話人 | 古森 公浩、横井 良明、横井 宏佳、大木 隆生 |