実行委員長ご挨拶

第14回 Japan Endovascular Symposium 開催にあたって
第25回日本血管内治療学会学術総会の添え木と
Off the-Job Trainingを通じての社会貢献

大木隆生

今年も第14回Japan Endovascular Symposium(JES2019) (8月21日(水)、8月22日(木))を開催しますが、これは毎年行っているアンケートを通じての皆さまの声に押されての開催であります。また、今回は第25回記念・日本血管内治療学会学術総会(8月20日(火)、8月21日(水))と共同開催することとなりましたが、これも昨年のJESアンケートで日本血管内治療学会と共同開催することに多くの皆さまから賛同を得たからであります。

日本血管内治療学会は今から遡る事24年前の1995年(平成7年)、未曽有の被害を生んだ阪神淡路大震災からわずか半年後の神戸で、当時神戸大学第2外科教授の岡田昌義先生(現理事長)の元、産声をあげました。そして第2回大会はあの辛口コメントで知られ、そして誰からも慕われたJES永年ファカルティーの故・打田日出夫先生(2012年没)が当時奈良県立医大放射線科教授として主催されました。本会は血管内治療の創世記に領域を超えて心臓・血管外科、放射線科、脳神経外科、循環器内科が一堂に会して議論する場として作られた学会であり現在でもそのコンセプトには普遍的な意義と価値があると考えています。しかし、血管内治療の急速な進歩と普及、また各領域における専門性が高くなるのに伴い個別に血管内治療を扱う学会が立ち上がり、その結果日本血管内治療学会が埋没し、その運営が難しくなりつつあります。実際、近年の年次総会開催にあたっては会長の多大な犠牲の上になりたっていました。そこで、本会がより健全に持続可能な形をとれる事を目指して3つの施策を打ち出しました。一つは任意団体だった日本血管内治療学会の一般社団法人化ですが、その実現には旧団体の解散、新・定款の制定、財産移行、そして会員の賛同など様々なステップが必要でした。この作業は昨年の総会で立ち上がった「在り方委員会」の皆さまのご協力を得て何とか実現しそうです。二つ目は脆弱だった事務局機能の強化です。そして、最後が財政的に厳しい状況を乗り切るために年次総会をより集客力があり財政的にも堅調なJESと共同開催する事です。2006年に私が米国から帰国した際に立ち上げた “Japan Endovascular Symposium”は日本語では「日本血管内治療シンポジウム」であり、名称に限らず、テーマも参加者も日本血管内治療学会と重なる部分が多いので、共同開催をすることで相乗効果、財政状況の改善が期待されます。また、参加される皆様においても学会の集約化による負担軽減に寄与すると思われます。このような理由から今年は共同開催し、JESが日本血管内治療学会の「添え木」の役割を果たしたいと考えています。なお、同様の発想で昨年は第60回国際脈管学会と第13回Japan Endovascular Symposium (JES2018)を共同開催しましたが、世界12か国から延べ924名の方にご参加いただいた成功体験がありました事も今回の共同開催を後押ししました。

JESに話は戻りますが、今年のプログラムはシンポジウムやvideo liveではJESの核となります最先端の血管内治療の勉強・討論の場を提供できるように心掛けて作りました。また、日本血管内治療学会と合同プログラムとなる反省症例セッションは多領域から集められた反省症例を提示して頂き、血管外科、放射線科、循環器内科、脳神経外科の経験豊富なコメンテーターにご意見を頂くというプログラムを企画しました。多くの学会では成功例や上手くいったトラブルシューティング症例がスポットライトを浴びがちですが、JESでは反省症例にこそ学ぶべき点があるとの考えの元、これまでも多くの合併症症例について皆で共有して参りましたがその伝統は今年も継続します。

JES設立から最初の10年ほどは2日間でライブ手術を20件ほど供覧しつつ終日大木節を炸裂させるなど私一人の独壇場でありましたが、今やJESは同じ志を持った仲間達が集い、通常の学会より胸襟を開いた本音の熱い討論ができる場へと発展しました。今年も皆様の忌憚のない討論を通じてこの領域の進歩に寄与できることを願っています。

さて、3年前からJESのもう一つの目玉となったJES Off the-Job Training(Off JT、2日間で最大9単位取得可能)コースを今年も開催します。新専門医制度ではOff JTの30時間以上の取得が定められておりますが、その取得に苦慮している若手外科医が多数存在する一方で猶予措置は2022年には終了します。専門医取得を目指している世代の外科医は手術に加えて、病棟管理、論文執筆、医局雑務などに忙殺される日々を送っていますが時間のない彼・彼女らが三学会構成心臓血管外科専門医認定機構の定めたルールを守りつつ効率良く履修出来ることをサポートする事を通じてJESは社会貢献を果たしたいと考えています。

また、皆様に喜んでいただけるJESノベルティーにも例年通り力を入れました。一品目は、光るボールペンの最新バージョンです。数年前にも同様のペンを作り好評でしたが、書き味が悪いという欠点がありましたが、2019年版光るペンは書きやすいですのでペンとしての実用性も高いです。二品目は持ち運びに便利で、紛失するリスクの少ないカード型USBですが、ご愛用いただけるものと確信しています。そして、恒例のJESオリジナルバッグは今年も好評のデニム製です。少しスタイリッシュになった新バッグを使い古されたであろう昨年のバッグと交換していただけたら幸いです。

慈恵医大・血管外科一同にとってJESとはJESが終わった翌日からまた翌年のJESを考えるという1年の大きな節目です。これまで多くの困難もありましたがJESがなければ新しい1年は始まらず、大きな負担である一方、これまでJESで得た仲間との大事な集いとしてかけがえのないものとなっております。夏の暑さに負けない熱い討論が皆様とできる事をスタッフ一同、楽しみにしております。そして晩夏の風物詩となったJESが今年も皆様にとりまして有意義な時間となる事を願っております。

第14回 ジャパン エンドバスキュラー シンポジウム (JES 2019)

実行委員長 大木 隆生

東京慈恵会医科大学 外科学講座

統括責任者・血管外科教授