実行委員長ご挨拶

第13回 Japan Endovascular Symposium開催にあたって:
第60回国際脈管学会の添え木とOff the job training を通じての社会貢献

大木隆生 JES2018実行委員会実行委員長

皆さまのご協力とご支援を受け、今年も第13回Japan Endovascular Symposium (JES2018)を第60回国際脈管学会と合同開催する運びとなりました。国際脈管学会(ICA)は2015年インドネシア・ジャカルタ大会の理事会でJohn B Chang理事長(当時)のご意思で私が会長に選出されましたが、Dr. Changはその2カ月後に急逝されてしまいました。すなわち第60回大会を慈恵医大で開催することは私の米国時代の恩人・友人であったDr. Changの遺言とも言え、それを守らない訳にはまいりません(次項追悼文参照)。一方で、昨今、企業からの支援を受けにくい国際学会の運営は困難を極めます。JESの継続開催に関しては歴史的使命を終えたのではとの想いがあったため中止も検討しましたが、財政的に厳しい国際脈管学会を単独で開催する事は困難であったことから、2つを合同開催することにしました。すなわちDr. Changの遺言を実現するための手段としてJESを継続したと言っても過言ではありません。こうして2018年8月20日(月)・21日(火)に国際脈管学会、そして8月22日(水)・23日(木)にJES2018を開催する事としました。

昨年のJESではライブサージェリーを実施できませんでしたのでライブではめったに遭遇する事の無い不成功・反省症例の共有に加えて血管内治療のホットトピックスをシンポジウムやパネルディスカッション形式で取り上げました。こうして開催した第12回JESですが、有難いことに858名もの方が参加してくれました。反省症例発表会では演者の皆さまにJESの趣旨を理解していただき、また勇気を出して恥部をさらけ出していただきましたのでご参加いただいた皆様も大いに勉強になったことと推察します。シンポジウム・パネルディスカッションでは通常の学会より一歩踏み込んだ本音のディスカッションができ、様々な問題に対して一定の見解が出せたのではないかと感じています。

例年行っている紙媒体・記述式のアンケートに加え、アナライザーを用いて各セッションでアンケートをとりましたが回答いただいた全員がJESは有意義であったとの回答を頂きました。さらに84%が翌年のライブサージェリー復活を望んでくださっている一方で、99%がライブの有無に関係なくJES2018に参加されたいとの回答を頂きました。また数多くの目頭が熱くなる記述コメントもいただき報われた思いです。

新専門医制度では心臓血管外科専門医取得にoff the job training (OffJT)を30時間履修することが定められていますがOffJTを履修できるコースが限定的であることを鑑み、JES/OffJTコースを同時開催し45名もの若手外科医に一人最大9時間の履修証明書を発行することができました。この企画が若手外科医のニーズに合致していたこと、JESが微力ながら社会貢献できた事が確認できました。これまでは、「ライブ手術実施の可否がJESを継続開催するか否かの決め手である」と考えていましたが、昨年のJESを終えて、「ライブを過大評価し、JESでの発表とディスカッションあるいはJESそのものを過小評価」していたことに気付きました。大事なのは血管内治療の向上・研鑽を共に目指す同士が集い、議論し、発信する場がある事で、それは皆様のアンケート回答からも明白です。そしてこれらに加えて今年は国際脈管学会の添え木という大義名分も加わります。

今年のJESでは好評だった「不成功・後悔症例検討会」、「ビデオライブ」は継続実施します。それに加えて、頸動脈から下肢に至る血管内治療の様々なホットトピックスを論じるシンポジウムを企画しました。また8つの共催セミナーでは各分野のトップランナーに最新の技術や機器に関するご講演をお願いしました。好評だったJES/OffJTは一層充実させ、今年はステントグラフト術、IVCフィルター、CTO突破、コイル塞栓術、血管吻合に加えTAVRを含む12のブースを設けました。OffJTの主旨と意義に賛同し、多大な負担を請け負っていただいた協力企業各社と担当指導医には感謝申し上げます。本稿執筆時点で事前登録人数が300人を超え、またOffJTもほぼ完売し、嬉しいと同時に皆様のご期待に応えねばと身が引き締まる思いです。

また、例年、力を入れているノベルティーですが、今年はトレンドの細型シャープペンシル付き2色ボールペン、文具大賞を受賞した「クタッとならないペーパークリップ」、デニムのオリジナルバッグ、マイブームの「うまい棒」のJESオリジナルバージョンなど様々な便利グッズを用意しましたのでご期待ください。

すっかり晩夏の風物詩となったJESと第60回国際脈管学会が皆様にとりまして有意義な時間となる事を心から願っています。

第13回 ジャパン エンドバスキュラー シンポジウム (JES 2018)

実行委員長 大木 隆生

東京慈恵会医科大学 外科学講座

統括責任者・血管外科教授