第12回 Japan Endovascular Symposium(JES2017)を終えて

大木隆生

去る8月23日・24日開催の第12回 Japan Endovascular Symposium(JES2017)は、多数の参加を得て終了することができました。参加者の皆様、開催、当日運営にお力添えくださった関係各位に心より御礼申し上げます。

2012年にライブでの死亡事例を受け、2013年から3回はライブ手術は実施せず、「賢者は歴史に学ぶ」をテーマとし、ライブでは学べない合併症症例を中心としたビデオライブをJESの柱としてきましたが、昨年は過去の参加者の強いご要望にお応えし、学内・学外の関係者と幾度も協議を重ね4年ぶりにライブサージェリーを復活させ、大過なく無事終了することができました。今年のJESでもライブサージェリーを実行すべく学内・学外の関係者と必死に協議を重ねてまいりましたが、そのさなかに朝日新聞によるJES申告漏れ報道があり、とどめを刺されたことは既にお知らせした通りです。
JESの開催はいろいろな意味で負担ですので正直申し上げてこれを機に終わりにしようと考え、その旨コアファカルティの皆様や慈恵医大血管外科のスタッフに伝えましたところ、「ライブがなくてもJESは開催すべきである」とのコンセンサスが形成され、重い腰を上げた次第です。
今年のJESではライブサージェリーのなかった際のJESのコンセプト「賢者は歴史に学ぶ」を継承した反省症例・合併症症例発表会に加えて血管内治療のホットトピックスをシンポジウムやパネルディスカッション形式で取り上げました。また共催セミナーでは各分野のトップランナーにご講演をお願いしました。
こうして開催した第12回JESですが、有難いことに858名もの方が参加してくれました。反省症例発表会では演者の皆さまにJESの趣旨を理解していただき、また勇気を出して恥部をさらけ出していただきましたのでご参加いただいた皆様も大いに勉強になったことと推察します。シンポジウム・パネルディスカッションでは通常の学会より一歩踏み込んだ本音のディスカッションができ、様々な問題に対して一定の見解が出せたのではないかと感じています。また、顔なじみ・リピーターが多いJESならではの一体感が感じられ嬉しく思いました。

例年行っている記名式のアンケートに加え、メイン会場である3階大講堂で、アナライザーを用いて症例ごと、発表ごとにアンケートをとりましたが有難いことに回答いただいた全員がJESは有意義であったと回答を頂きました。さらに84%の方が来年のライブサージェリー復活を望んでくださっている一方で、99%がライブの有無に関係なくJES2018に参加されたいとの回答を頂きました。また数多くの目頭が熱くなるコメントもいただき報われた思いです。アンケートにご丁寧にご回答いただいたことにも感謝します。
また、新専門医制度では心臓血管外科専門医取得にoff the job training (OJT)を30時間履修することが定められていますがOJTを履修できるコースが限定的であることを鑑み、JES/OJTコースを同時開催し45名もの若手外科医に一人最大9時間の履修証明書を発行することができました。OJTコース参加者アンケートでは1名を除く全員から「後輩に勧めたい」との回答が得られ、この企画が若手外科医のニーズに合致していたこと、JESが微力ながら社会貢献できた事が確認できました。なお、1名の「勧めない」と回答した理由は「JES本体に参加できないから」というものでした。

昨年、4年ぶりにライブサージェリーを復活できたJES2016後に皆様にお送りしたお礼状には次のように書きました。「ライブサージェリーという極めて有効な教育ツールを外科系診療科で絶滅させない事がJESの新たな使命と捉える事もできます。(中略)過去3年間のライブ手術の無かったJESとJES2016の参加者の感想を比べると、ライブ手術の無いJESは継続する意義は限定的で歴史的使命を終えたと考えています。
言い換えますと、ライブ手術実施の可否がJESを継続開催するか否かの決め手です。」と書きました。しかし、第12回JESを終えて、前言を撤回させていただきます。私は毎年参加者のライブサージェリーの要望が強いこともあり、「ライブを過大評価し、JESでの発表とディスカッションあるいはJESそのものを過小評価」していたことに気が付きました。第12回JESを終えた今、大事なのは血管内治療の向上・研鑽を共に目指す仲間が集い、議論し、発信する場があることで、そこにライブサージェリーが付随的にあればなお良い、と感じていますし、皆様のアンケート回答からもその事は明白です。従いまして、来年のJESでライブサージェリーを実施できるか否かは全く不透明ですが、JESを第60回国際脈管学会とともに開催することは決心しましたので、慈恵医大血管外科一同は来年のプログラム作りに本日から着手します。ご参加いただいた皆様には今後とも温かく見守っていただけますようお願い申し上げます。

末筆ではございますが、皆様のご健勝にてますますのご発展を心より祈念いたします。

第12回 ジャパン エンドバスキュラー シンポジウム (JES 2017)

実行委員長 大木 隆生 

東京慈恵会医科大学 外科学講座
統括責任者・血管外科教授

次回の開催予定

JES2018

会期
2018年8月22日(水)₋23日(木)
会場
東京慈恵会医科大学 大学1号館

60th Annual Congress International College of Angiology (ICA2018)

会期:2018年8月21日(火)・22日(水)と一部共同開催となります。

JES 2017 会期

2017年 8月23日(水),24日(木)

会場

東京慈恵会医科大学 大学1号館

所在地:〒105-8461 東京都港区西新橋3-19-18

主催

Japan Endovascular Symposium研究会

http://www.japanendovascular.com/

実行委員長

大木 隆生

Takao Ohki,MD
東京慈恵会医科大学 血管外科
Division of Vascular and Endovascular Surgery
Albert Einstein College of Medicine
New York, USA

世話人

古森 公浩、横井 宏佳、大木 隆生

お問合せ先

JES運営事務局

株式会社 エヌ・プラクティス 内

所在地:
〒541-0046
大阪市中央区平野町1-8-13平野町 八千代ビル 7F
電 話:
06-6203-6731
FAX:
06-6203-6730
Email :
jes-info@n-practice.co.jp