実行委員長ご挨拶

「ライブサージェリーはなくてもJESは終わらない」

第12回ジャパン エンドバスキュラー シンポジウム (JES2017)を、本年8月23日(水)・24日(木)に例年通り弊学講堂におきまして開催する予定で鋭意準備を進めております。

2012年第7回JESのライブサージェリーでの死亡事例を受けその後3回はライブ手術は施行せず、「賢者は歴史に学ぶ」をテーマとし、ライブでは学べない合併症症例を中心としたビデオライブをJESの柱としてきましたが、昨年の8月24日・25日開催の第11回JESでは、学内外の幾多のハードルを何とか乗り越え、皆様のご要望にお応えして4年ぶりにライブ手術を復活させ、大過なく無事終了することができました。関係各位と参加していただいた皆さまにはご協力を頂き、心より御礼申し上げます。

例年以上に緊張感をもって迎えた第11回JESですが、ありがたいことに1000名近い参加者を得ました。7割以上が複数回JESに参加の医師たちでしたが、3割はライブ手術への期待の高さを反映して初めての参加者でした。今回は、例年行っている記名式のアンケートに加え、メイン会場である3階大講堂で、アナライザーを用いて症例ごと、発表ごとにアンケートをとりましたがありがたいことに全てのライブ手術で95%以上の参加者が「参考になった」、あるいは「有意義であった」と回答を頂きました。また第11回JES全体を通しても、1名を除くすべての人が有意義であったと回答を頂きました。さらに記名式のアンケートにも、ライブ手術復活を望んでくださっていた思いが伝わるコメントを多数頂き、ライブ手術の教育効果の高さが参加者の声からも改めて証明されたと感じた次第です。第11回JESではわずかに6例のライブ手術でしたが、2006年、まだ私が米国在住中に手探りで発足させた第1回JESや、朝から晩まで計20例のライブ手術を供覧したその後のJESより、あらゆる意味で大変でした。ライブサージェリー実施にあたりましては様々な障壁がありましたが、皆さまの反響や声をお聞きして報われた想いでした。

このように苦難を乗り越えて断行したライブサージェリーは有意義でしたが、ご承知のように医療を取り巻く環境は年々厳しくなっています。JESにおいては、第7回JESでの死亡事例とその後の週刊朝日の「神の手の誤算」記事、また、私においては2015年の週刊文春の「名医を疑え」記事に端を発する一連のバッシング記事が一層JESの運営を厳しくしてしまいました。当然、慈恵医大学内でもライブサージェリーの功罪、リスク・ベネフィットに関して学内倫理委員会、病院運営会議、そして理事会などで慎重に審議されていました。そうした最中に4月16日の朝日新聞にJES研究会の会計処理に関する大きな記事が掲載されました。元々厳しい状況の中、断行した昨年のライブサージェリー、そしてギリギリの交渉を続けて何とか関係各位の了解を得ようとしていた今年のライブサージェリーでしたが、この朝日新聞の記事でとどめを刺されました。本記事に関しては全参加者へのメールとJESホームページに事情を説明した通りで、反社会性、偽装、隠蔽、私的流用などは指摘されませんでしたし、国税の乱暴なスキームに納得しているわけではありませんが、世間を騒がせた結果責任は免れません。一方、血管内治療が普及・定着した事に伴い解決すべき新たな問題も出現しておりますし、イノベーションが止まる事はありません。さらに、アンケートで得られた皆様からのありがたいお声も念頭に関係各位と慎重に検討を重ねました結果、これまで築き上げた血管病を扱う各診療科の皆さまとのご縁を大切に、意見交換、情報発信の場としてライブサージェリーを実施できなくても第12回JESを開催する事にしました。ライブはありませんが血管内治療の未解決トピックス、恒例の反省症例発表会、そして相談症例検討会や新専門医制度において課題となっているOff the job trainingのポイント獲得支援などプログラム内容もより充実するよう準備をすすめ「晩夏の風物詩」を継続させていく所存であります。

第12回JESもより多くの皆様が忙しいスケジュールの合間にJESに参加してよかったと思ってくださるような会にすべく慈恵医大血管外科スタッフ一同願っておりますのでより多くの皆さまのご参加をお待ちしています。

JES2017 実行委員会 実行委員長

大木 隆生

東京慈恵会医科大学 外科学講座

統括責任者・血管外科教授