JES2011 症例集

症例1-2
67歳 男性

【診断】両側腎動脈狭窄 右:99%狭窄 左:95%狭窄

【主訴】
検査異常
【起始・経過】
2010年12月頃より約100mの右下肢間欠性跛行が出現し他院受診。ASOの診断で当院紹介となった。精査にて、右外腸骨〜総大腿動脈の閉塞と共に、両側腎動脈狭窄が認められた。ASOの治療を先行し、左外腸骨動脈−右総大腿動脈バイパスを行った(左鼠径部はPTRAのためにカットダウンせず)。CTで両側腎萎縮著明となり(右8.5cm・左8.0cm)、またARB内服にて腎機能の急速増悪(Cr:2011年1月1.0、7月1.36、8月1.6)を認め、今回両側腎動脈狭窄に対してPTA/stent予定となった。
【既往歴】
65歳 遅発性高血圧 降圧薬4剤内服していたがCr上昇認めARB中止
糖尿病(-)、脂質異常症(-)、cardiac disturbance(-)
【治療計画】
腎動脈PTA/stent(Palmaz Genesis / Express SD)
JES2011 症例1-2

症例3-4
80歳 男性

【診断】左内腸骨動脈瘤 (∅2.5cm)

【主訴】
検査異常
【起始・経過】
2008年9月、他院腹部エコーにて腹部大動脈瘤(AAA)を指摘され、治療目的に当院受診となった。AAAの瘤径は7.1×8.0cmであり、2009年6月開腹人工血管置換術(Y graft)が行われた(当院)。術後経過観察中、術前∅2.0cmであった左内腸骨動脈瘤が2010年2.0cm、2011年2.5cmと増大傾向であるため、前回手術した時に計画した通りIIA治療となる。
【既往歴】
59歳 胆石→胆嚢摘出術、75歳 前立腺肥大→TUR-P
高血圧(-)、糖尿病(-)、脂質異常症(+)
【治療計画】
局所麻酔下にパークローズを用い、ダブル穿刺法の後に12Frシースを挿入
裏口閉鎖:左内腸骨動脈瘤コイル塞栓術(Orbit ヨット部作戦)
表玄関閉鎖:Excluderの iliac extender
JES2011 症例3-4

本邦初
症例5
66歳 男性

【診断】閉塞性動脈硬化症(左総腸骨動脈閉塞)

【主訴】
左下肢間欠性跛行(約200m)
【起始・経過】
2008年2月より左足関節周囲(特に内果)に潰瘍が認められ、他院受診。左下肢静脈瘤の診断で保存的治療も潰瘍の改善認めず、当院紹介受診となった。
精査にてASO(左総腸骨動脈閉塞)も合併しており、左下肢静脈瘤はDoddからの逆流が認められた。当院初診時、間欠性跛行は認められず、症状(潰瘍を含め)の大半は静脈瘤によるものであったため、当院においても、弾性ストッキングによる保存的治療をまずは行うこととした。しかし、潰瘍の改善は認められず、次第に間欠性跛行が出現したため、混合型潰瘍と判断した。ASOの治療を先行し、その後静脈瘤の治療を行う予定とした。
【既往歴】
高血圧(-)、糖尿病(-)、脂質異常症(-)、喫煙歴:3年前まで60本/day
仕事:蕎麦屋(立ち仕事)
【治療計画】
Aguru Pierce CTOワイヤでCTOを突破
左CIAstent(Express LD)、場合によりoutback使用
JES2011 症例5

症例6
66歳 男性

【診断】胸腹部大動脈瘤術後吻合部瘤に対する
枝付きステントグラフト後のエンドリーク
(SMAステント分岐部)

【主訴】
検査異常
【起始・経過】
2006年5月、胸背部痛出現し他院受診。精査にて胸部下行大動脈瘤が認められ、開胸開腹人工血管置換術施行。
2006年7月、術後1ヶ月目に、再度胸背部痛が出現し、末梢吻合部の仮性瘤と血腫(Contained rupture)が認められたため、再度開胸開腹し縫合閉鎖術を施行。
2007年1月、再々度胸背部痛が出現し、胸部CTにて再度吻合部仮性瘤が認められたが、手術困難との判断で保存的に加療された。以来4つの基幹、大学病院を受診するも、同様に手術不能といわれた。
2007年5月、吻合部瘤のsize upが認められたため、ステントグラフト治療の可否を含め、当院紹介受診となった。
2007年11月、当院にて枝付きステントグラフト施行(celiac/SMA/bil RAの枝付き)。術後胸背部痛は消失し、エンドリークも認められず、経過良好であったが、術後4年目にSMAステント周囲からのエンドリークが認められため(type III 疑い)追加ステント予定となった(経過中総肝動脈瘤に対してコイル塞栓を行っている)。
【既往歴】
高血圧(-)、糖尿病(-)、脂質異常症(-)
【治療計画】
SMAの追加ステント(カバードステント:Atrium)
JES2011 症例6

本邦初
症例7
55歳 男性

【診断】解離性大動脈瘤(∅5.2×6.0cm)

【主訴】
胸痛
【起始・経過】
2007年5月に胸痛出現。他院精査にてStanford B解離が認められ、保存的治療にて軽快退院となった。経過観察中、下行の解離瘤が増大傾向であるため、血管内治療を希望され、当院紹介受診となった。初診時の瘤径は4.5×5.0cmと小さく、無症状であったため、外来にて経過観察となった。2011年4月のCTで、瘤径が5.2×6.0cmに増大し(半年で5mm増大)、かつ、前回認められなかった3腔解離が出現し、偽腔の造影剤濃度の増加も認められたため、手術予定となった。
【既往歴】
高血圧(+)、糖尿病(+)、脂質異常症(-)
【家族歴】
父親:AAA破裂にて死亡
【治療計画】
CardioMEMSワイヤレスセンサーで偽腔圧モニター遠位弓部に認められるEntryの閉鎖(解離腔なのでしなやかTAG)。
Re-entryは動脈瘤から約25cm末梢側に存在し、かつ小さいため、Re-entryの閉鎖は不要と予想されるが、Entry閉鎖後のAngio所見と偽腔圧測定でComplete exclusion 対 Partial exclusionを選択。
JES2011 症例7

本邦初
症例8
76歳 男性

【診断】腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術後
Type II エンドリーク(∅4.9×5.1cm)

【主訴】
背部痛
【起始・経過】
腹部大動脈瘤(∅4.0×4.3cm)、右内腸骨動脈瘤(2.8×3.2cm)に対して2007年7月ステントグラフト内挿術+右内腸骨動脈コイル塞栓術施行(当院)。術後よりtype II エンドリークが認めていたが、瘤径拡大ないため、経過観察していた。右内腸骨動脈瘤の経過は順調であったが、次第に腹部大動脈瘤が増大し(2011年6月:∅4.9×5.1cm)、かつ、腹部拍動が触知され、背部痛と腹部圧痛も認められるため、手術予定となった。
【既往歴】
57歳 高血圧
60歳 不整脈
糖尿病(-)、脂質異常症(-)、喫煙歴(-)
【治療計画】
Type II エンドリークに対する標準的治療である
経腰的大動脈瘤コイル塞栓術(prone position、orbit)
JES2011 症例8

症例9
85歳 女性

【診断】胸部大動脈ステントグラフト内挿術後
Distal migration

【主訴】
背部痛
【起始・経過】
2004年に偶然胸部大動脈瘤を指摘された。瘤径は小さいため経過観察となっていたが、次第に増大し、当院紹介受診となった。CT上、瘤(∅5.7×6.6cm)は遠位弓部に認められ、2008年3月TEVAR(TAG)施行された。術前より認められた背部痛は次第に消失し、エンドリークも認められず、経過良好であった。しかし、術後2年頃より、背部痛が再発した。CT上、ステントグラフトのdistal方向への migration(約2cm)が認められたものの、エンドリークは認められず、瘤径の変化は認められなかった。
2011年3月のCT上、瘤径は短径6.2cmと術前と比較して5mm増大しており、背部痛も継続していたため、追加TEVAR予定となった。
【既往歴】
50歳 卵巣のう腫手術、高血圧(-)、糖尿病(-)、脂質異常症(-)
【治療計画】
2008年に施行したTAGの中枢側にradial forceが強く、Bird's Beak現象のないTalentステントグラフトの追加を予定(ATPによる心停止が必要)
JES2011 症例9

症例10-11
59歳 女性

【診断】腹部大動脈狭窄・上腸間膜動脈狭窄

【主訴】
両下肢間欠性跛行(約5〜10m)
【起始・経過】
約8年前より坂道で下肢の倦怠感を自覚。次第に症状悪化し、今年の3月頃より約5〜10mで歩行困難となったため他院受診後、治療目的に当院紹介受診となった。高安病(IV型)の疑いあるも炎症反応ないためステロイドは使用していない。CT上、腹部大動脈の狭窄と上腸間膜動脈根部の狭窄が認められた。
【既往歴】
55歳 高血圧
45歳、50歳 両側膝半月板手術
糖尿病(-)、脂質異常症(-)、喫煙歴(+)1年前まで約10本
【治療計画】
腹部大動脈ステント(Luminexx、穿孔に備えてカバードステントバックアップ)
上腸間膜動脈ステント(Safety Net目的にExpress LD)
JES2011 症例10-11

本邦初
症例12
58歳 男性

【診断】両側下肢静脈瘤(Saphenous type)

【主訴】
両下肢のだるさ(左>右)
【起始・経過】
15年程前に両下肢静脈瘤に対して高位結紮を行ったが、5年前より再び同様の症状が出現した。他院にて弾性ストッキングにてフォローアップを指示されたが、本人希望にて当クリニック受診となった。
【既往歴】
重だるさ、こむら返り、むくみ
高血圧(-)、糖尿病(-)、脂質異常症(-)、喫煙歴(-)
大木式鉗子
【治療計画】
症状の強い左下肢を先行。
左下肢レーザー治療+下腿瘤切除
約1〜2mmの穴から小さく入れて大きくつかむ
大木式鉗子を用いて瘤切予定
JES2011 症例12:銀座7丁目クリニック

症例13
75歳 男性

【診断】左内頸動脈狭窄(無症候性)

【主訴】
検査異常
【起始・経過】
2008年10月、近医の健診USにて左内頸動脈狭窄(約60%)を指摘。
その後、定期的にfollow upされていたが、2011年5月、狭窄率が83%と上昇認めたため加療目的に当科紹介。
【既往歴】
30歳 高血圧  40歳 総胆管結石症→手術  60歳 慢性C型肝炎
74歳 アルツハイマー型認知症
【治療計画】
(1) Plaque Burden低くembolicリスク低い
(2) アルツハイマー悪化を誘発する全身麻酔回避
以上の理由からCAS(まぁいいかCAS)
JES2011 症例13

症例14
80歳 女性

【診断】左総頸動脈狭窄 (内膜剥離術後再狭窄)

【主訴】
検査異常
【起始・経過】
2010年10月、左総頸動脈狭窄(約75%)に対し、標準型内膜剥離術(非eversion法、simple closure)施行。脳梗塞などの合併症無く、術後4日目に退院。頸US上もVmax1.05m/sまで改善したが、2011年4月、左頸部雑音が出現。頸USにてVmax3.5m/sと上昇していたため、CEA術後再狭窄の診断にて手術目的に入院となる。
【既往歴】
50歳 間質性肺炎、 COPD(+)、60歳 脂質異常症(+)、
糖尿病(-)、喫煙歴:10本/day(30〜60歳)
【治療計画】
脳血栓保護フィルタ(Angiogard)使用し
正確留置が重要なので総頸動脈ステントはPRECISE
再狭窄でembolic risk低く“やむなしCAS”を選択
JES2011 症例14

症例15-16
71歳 男性

【診断】右内頸動脈狭窄/右鎖骨下動脈狭窄

【主訴】
左手の痺れ、右上肢労作時疲労感
【起始・経過】
2008年6月、症候性左内頸動脈狭窄に対し慈大式内膜剥離術(eversion法)施行その際より指摘されていた右内頸動脈狭窄が2011年6月、頸USにてVmax3.1m/sと上昇し、左手の痺れもしばしば出現。
また、右上肢の労作時易疲労感も認め、CT上右鎖骨下動脈狭窄を認めるため、今回手術目的に入院となる。
【既往歴】
45歳 高血圧、脂質異常症  58歳 ASO→両側F-P bypass
62歳 ASO→Ao-Bif bypass術  68歳 左内頸動脈狭窄→内膜剥離術
糖尿病(-)、喫煙歴:60本/day(20〜60歳)
【治療計画】 ”ハイブリッド治療“
(1) 脳血管造影
(2) 右頸動脈内膜剥離術(慈大式)
(3) 右内頸動脈を一時的に遮断し、右鎖骨下動脈ステント(脳梗塞予防)
JES2011 症例15-16

東日本初 症例17-18
79歳 男性

【診断】腹部大動脈瘤/左内頸動脈狭窄症

【主訴】
腹痛
【起始・経過】
2011年3月、近医にて腹痛精査のUSにて腹部大動脈瘤を指摘された。インターネットで当科を知り紹介受診となる。
CTAにて腹部大動脈瘤(∅61×64mm)及び左内頸動脈狭窄症(約60%)を認め、EVAR及び脳血管造影目的に入院。
【既往歴】
60歳 高血圧  COPD(+)、糖尿病(-)、脂質異常症(-)
喫煙歴:30本/day(20〜56歳)
【治療計画】
(1) 脳血管造影
(2) EVAR(総腸骨動脈の屈曲が強いため、しなやかZenith Spiral Z)
(3) 後日CEAか?
JES2011 症例17-18

本邦初 症例19-20
65歳 女性

【診断】胸部大動脈瘤∅5.8cm/
腹部大動脈瘤∅3.0cm(ULP)

【主訴】
嗄声・背部痛
【起始・経過】
2011年7月、主訴出現。近医もCTにて胸部大動脈瘤(∅5.8cm)、腹部大動脈瘤(∅3.0cm・ULP)指摘された。
手術が必要であるがCOPDもあり、リスクはかなり高いため、地元秋田県の病院では手術不能と言われていた。
偶然TVで当院を知り、当院紹介となる。
【既往歴】
50歳 高血圧、心房細動→ワーファリン内服、61歳 AMI→PCI、COPD(+)
糖尿病(-)、脂質異常症(+)、喫煙歴(-)
【治療計画】
(1) TEVAR(弓部瘤にもピッタリフィット(TX2proform))
(2) “ついでにEVAR”
JES2011 症例19-20

本邦初 症例21-22
82歳 男性

【診断】腹部大動脈瘤∅5.8×6.0cm/
左総腸骨動脈瘤∅2.3×1.9cm

【主訴】
検査異常
【起始・経過】
2005年、便秘の精査で偶然、AAA(∅3cm)を指摘された。
2008年、近医MRIで∅5cmと言われ、当院紹介。
CTAで∅4.5×4.8cmであったため、followされていたが、
2011年5月、∅5.8×6.0cmまで増大したため手術目的に入院。
【既往歴】
40歳 高血圧、心房細動→ワーファリン内服、
75歳 COPD、75歳 膀胱癌→TUR-Bt
78歳 脳梗塞→視野障害
糖尿病(-)、脂質異常症(-)、喫煙歴:20本/day(20〜55歳)
【治療計画】
(1) 世界の新たなマーケットリーダーEndurantで治療
 (ExcluderとZenithのいいところ取りステントグラフト)
(2) 左内腸骨動脈インポテンス対策ステント(Palmatz Genesis)
JES2011 症例21-22

本年初 症例23-25
82歳 男性

【診断】閉塞性動脈硬化症

【主訴】
間歇的跛行50m(左>右)
【起始・経過】
2006年頃より、間欠性跛行150m出現。
その後、間欠性跛行50mまで徐々に増悪を認めたため、2011年5月、近医受診。ASO両側多発病変にて、当科紹介となる。
当院のCTAにて右EIA 90%、左CIA 60%、左EIA 90%、左SFA 30cmCTOを認め、手術目的に入院。
【既往歴】
60歳 高血圧、 63歳 心房細動→ワーファリン内服、
糖尿病(-)、脂質異常症(-)、喫煙歴:30本/day(20〜66歳)
【治療計画】
(1) 右EIAステント(Zilver)
(2) 左EIAステント(Zilver)
(3) 左CIAステント(Luminexx)
(4) 余裕があったらViabhanで血管内F-P bypass(JES2010以来日本2例目)
JES2011 症例23-25

症例26-28
87歳 女性

【診断】閉塞性動脈硬化症/重症虚血肢

【主訴】
両足趾潰瘍、安静時痛
【起始・経過】
2011年1月、右足趾潰瘍出現。ステロイド内服にても症状改善せず。
2011年2月、前医で右F-P bypass施行するも改善せず。
2011年7月より両足趾に潰瘍出現。当科紹介となる。
【既往歴】
50歳 高血圧、 AAA∅4.7cm  71歳・78歳 AP→PCI、
76歳 乳癌→乳房部分切除+化学療法
糖尿病(-)、脂質異常症(-)、喫煙歴(-)
【治療計画】
Short lesion/SVGなし/87歳なので“やむなし”Tibial PTA
(1) AAAありShaggyなので山越え禁。よって両側CFAをprogradeで穿刺
(2) 左腓骨動脈PTA(cutting balloon)
(3) 右前脛骨動脈・右腓骨動脈PTA
(4) 右第3趾・左第4趾デブリードメント、左第3趾抜糸(皮膚科でbiopsy!)
JES2011 症例26-28